LEARNについて
LEARNとは?
インターネットの普及は国際化を促進し、効率良い社会を実現しています。それに対応するために、学校には、英語教育、プログラミング教育、STEAM教育などの波が押し寄せています。余裕のない学校の中で、子どもだけでなく、先生もどんな学びを提供すべきなのかを議論する時間が足りないという声が聞こえてきます。
我々は、従来型の教育を全否定するわけではありません。社会の発展にはオールマイティに最新の知識を広く深く有し、協働できる人材も必要だと思います。しかし、その道だけだと排除される子どもが増えることが予想されます。実際に不登校児童・生徒は増加の一途をたどっています。
子どもは皆違います。能力に偏りがある子、自分のペースで取り組むのが好きな子、一人でゆっくり考えたい子など生まれつき個性や認知特性がある子どもたちも、今の社会の中では、それを抑えて頑張ることが求められます。受験勉強に面白さを感じて打ち込む子ども。興味のあることにのめり込んでも受験の役に立たないから辞めなさいと否定される子ども。
後者のように否定され自分を抑え続ける子どもは大きなストレスを抱えているに違いありません。
適応できなかった子どもたちは、集団が向かなかっただけのかもしれませんし、苦手な教科があっただけなのかもしれません。しかし、それでは社会に適応できないと、自分を変えるように求められます。そもそも学校や社会の制度に問題があると考える人は多くありません。
LEARNは現在の学校教育と違った学びを提供するプログラム。
そのスタイルは、「目的なし」「教科書なし」「時間割なし」「協働なし」。
枠を緩めた自由な空間の中だと、子どもたちはいつもと違う動きを始めます。
LEARNは、Learn(学ぶ)、 Enthusiastically(熱心に)、 Actively(積極的に)、 Realistically(現実的に)、 Naturally(自然に)の頭文字に由来します。全く違うベクトルの5つの言葉が共存していることからも分かるように、このプログラムは多様な軸を有する活動が共存しています。様々な子どもがすれ違える場を作ることで、新しい多様な学びの方向性が見えてくると確信しています。
LEARNは全国各地で開催され、初めて出会う仲間と、お互いを批判することなく、自分の好きなことを、自分流で楽しむワクワクする学びの場です。この活動を通して、子どもたちがありのままの自分でもいいんだと安心すると同時に、学びの面白さや自由さに気づいてもらうことが1番目の狙いです。そうすることで、保護者も子どものありのままの成長を楽しみ、安心できるようになるでしょう。
2番目の狙いは、子どもたちが自由に行き来できるような、今の公教育を補完するもう1つの教室をつくることです。LEARNで学ぶことも公教育の1つとして認められればと思うのです。すでに地域によっては自治体と連携し、平日にLEARNに参加しても、欠席扱いにならず、学校の学びとして求められるプログラムもあります。
学校と連携した無数のLEARNの学びの教室が全国各地で展開されるようになると、学ぶことにワクワクする子どもが、新しい未来を創造し始めるに違いありません。
LEARNプログラムについて
意欲的で突き抜けた才能を有する子どものプログラムから、今は勉強嫌いだったり無気力だったりする子どものプログラムまで様々なアクティビティプログラムと、成績不問・障害不問のスカラーシッププログラム(LEARN ONE)を展開していきます。
LEARNで生み出すプログラムは、固定的ではなく常に変化していきます。
運営は東京大学先端科学技術研究センター「個別最適な学び研究」寄付研究部門が行なっています。
研究室ホームページ https://comsuru.com/
LEARNの誕生について
2014年から異才発掘プロジェクトROCKETを展開し、不登校など学校に馴染めない子どもの新しい学びのあり方を社会に発信して来ましたが、2021年6月より新しいプログラムに移行することになりました。
この期間、不登校に対する社会の見方は大きく変化し、彼らが学ぶ場も充実してきました。また、ユニークな才能についても注目されることが多くなり、様々な支援プログラムが生まれています。「突き抜けた」「才能のある」「能動的で」「志のある」子どもに関しては異才発掘プロジェクトROCKETを通して救われた部分もあるかもしれません。多くの方々からROCKETへのご支援をいただきました。それはROCKETのポリシーが、社会がポジティブに捉える特性を伸ばすものだったことが大きいと感じています。
しかし、この「志」や「突き抜けた才能」を持つ子どもを発掘し、自己責任で前に進めという教育は、その一方で、「自分は他の子に比べて突き抜けてないからダメだ」と思う子どもを生み出し、彼らを苦しめるようになってきたのも事実です。突き抜けている事だけが素晴らしいことではありませんが、ユニークさを強調したが故に、普通であることがダメであるかのように捉える子どもが出てきてしまいました。また、ROCKETに選ばれることを目標にする子どもも出てきました。つまり、メリトクラシー(業績・能力主義)を批判しながらROCKETがメリトクラシーの罠にはまったわけです。
現実には、役に立たないことをやり続けて評価されていない、何をしていいか分からず引きこもっている、障害が重度で意思が表出できない多くの子どもたちは参加できない状況でした。今も彼らの多くが、またご家族も、大きな不安を抱えています。我々は、意欲がなくても、際立つ才能がなくても、障害による様々な困難があっても、子どもが自己否定せず、自信を失わず学べる社会を理想としたのですが、ROCKETという看板が一部の子どもには重荷であり、また無関係に思わせるものでした。それがROCKETの看板を降ろす理由です。
突き抜けとは違う道があってもいいと思います。平凡でもいいのです。今は志がなくてもいいのです。
「一人が好き」「あまり喋らない」「こだわりが強い」「自信過剰」「障害による困難がある」といったこれまでネガティブに捉えられてきた特性も私たちは愛すべき特性だと思います。
ユニークで突き抜けていることは一つの素晴らしい才能です。勉強ができて、協調性もあり、オールマイティな子も素敵です。我々は引き続きそんな子どもたちも応援していきます。
結局はそれぞれがそれぞれの個性を発揮して生きられる場を創造する必要があるのです。ROCKETだけでなく、これまで研究室にあったその他の学びの場も統合した新しい学びの場がLEARNです。
運営について
東京大学先端科学技術研究センター
東大先端研においては、現代の教育課題を解決すべく2005年から実践的な教育研究を行ってきました。
社会は不適応を起こした子どもに治療教育を提供し、標準的だと考える子どもに近づくことを期待します。しかし、我々は、ICTを活用して「障害学生の入試の壁」、「学習障害の読み書きの壁」、「不登校児童・生徒の学びの壁」、「重度重複障害児のコミュニケーションの壁」など様々な教育課題の壁を壊す研究を行ってきました。まだ残念ながらICTで能力をエンハンスできたとしても社会の高い壁を超えられず苦悩する子どもが大勢います。すでに自信を失い、課題に挑むことに困難を重ねてきた子どもが、積極的に自分を変えて壁を超えることは相当ハードルが高いと感じることなのかもしれません。そもそも彼らが変わる必要があるのでしょうか?自分を変えてまで組織に属す必要があるのでしょうか?
DX(デジタルトランスフォーメーション; 進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させること)時代に突入し学校や会社の壁が低くなり、時間空間を超えた組織が生まれつつあります。これは、彼らが既存の社会に無理に適応しなくても、新しい環境を容易に構築でき、さらに既存の環境とも繋がれることを意味しています。課題設定の自由度も高まっており、好きなことから学べる環境の中で彼らの能力を伸ばすことが可能です。その個別最適な環境の中では、彼らが自分を好きになり、自信を取り戻し、意欲を高めていくことが今までよりは容易になってくるでしょう。
個別最適な新しい学びの場とは何かを教育実践を通して追求していきます。
LEARN (Learn Enthusiastically, Actively, Realistically, and Naturally) is an alternative education program that provides diverse children with unique opportunities for learning. Unlike the education that is typically offered in current school education in Japan, our education program is free from “Preset goals and standards,” “Textbooks,” “Fixed schedules,” and “Compelled groupwork.” By loosening these constraints, we uncover children’s positive features that are not usually observed in typical school education.
As you see from the name of this program (LEARN) which consists of five independent concepts, our program involves diverse activities whose core characteristics are different. Due to such diversity of the activities, we believe that our program promotes interaction among various children and facilitates creation of multiple new directions of learning.
The activities of LEARN are held across many regions in Japan. In these activities, children enjoy themselves what they love, with peers they meet for the first time, without criticizing each other. Through these activities, we want the children to feel comfortable with just being as they are, and to find the fact that learning is fun and flexible. Such experiences will also let the parents accept and enjoy the unique development of each different child.
Through the creation of our program, we also aim to produce “an alternative educational space” that compliment current public education. In some areas in Japan, we have already started to collaborate with the educational sectors in the local governments, and as a result, they allow the children to participate in our program as a part of their school education. In future, we would like our national government to regard our program as a part of formal education. Once various activities in our programs are held in collaboration with local schools across various areas in Japan, we believe many children will truly enjoy learning and begin to create a new future, ultimately.
Background
Due to the widespread prevalence of Internet, our world has been rapidly globalizing and becoming more and more efficient. The radical changes demanded schools to change their education, starting new curriculums, including English education at early ages, programming education, and STEAM education. The change is too fast for educators to discuss thoroughly about what kinds of learning opportunities should be provided at schools.
Meanwhile, there has been an increase in the number of children who do not go to school. This means current school education in Japan is somewhat limited.
Children are all different. Some of them have atypical cognitive characteristics. Some of them have both exceptional strengths and challenges. Some of them only can learn at their own pace. Some of them need personal space to learn. Despite the diversity, current society compels such children to mask their characteristics and follow “the standards.” Especially in Japan, some children are told to stop devoting their time to anything other than taking exams. These children must feel stressed out because they keep being denied.
Children who have difficulty adjusting to current school system may just not like specific subjects, or just not fit well with their peer groups. Nevertheless, these children are regarded as maladaptive to our society and requested to change themselves. But which truly dose have a problem, these children, or our school system and society?